ターナー色彩株式会社

審査員の言葉 大賞未来賞高等学校最優秀賞専門学校最優秀賞優秀賞入選学校賞募集要項2013TURNER AWARD

審査員による作品講評会

TURNER AWARD 2013 審査を終えて

O JUN(画家・東京藝術大学准教授)
大島賛都(美術評論家)
天明屋尚(美術家)
本吉康成(イラストレーション編集長、玄光社)
(五十音順・敬称略)

12月24日・TURNER GALLERYにて収録
O JUN大賞の仁禮洋志さんは、直方体の形らしきものを中心にシンプルな絵作りをしているのですが、出品作の中では「一番、絵になっているな」、という印象を受けました。ただ、公募展の大賞という点からは、もう少し期待したい気持ちがあります。すっと自分の理解に入ってくるんだけれど、それを跳ね返すくらいの強さや訳のわからなさがあっていいかなと。

大島公募展の役割には、ものの見かたを覆す価値観を見い出すこともありますから、この作品を大賞に推すのは、ある意味、異例なのかもしれません。でも、個人的にはとても好きな作品でした。シンプルな構図なのですが、直方体を微妙に中央からずらしている。また、箱の中に描かれた泡の不思議な感じも魅力的です。背景の白色にしても、箱の外と内で微妙に変えてあったりと、色の作り方の緻密さがシンプルな構図を支えている。出品者の中でも、感覚が抜けていると感じました。こうした軽やかな要素で絵を成立させる、日本的な絵の作り方をもっと応援したいというのも選んだ理由のひとつです。

天明屋装飾的な日本美術と引き算的で簡素な日本美術があるとすると、この作品は引き算的なもの、水墨画的な絵だと感じました。余白を活かした引き算の美学、簡素な線でいて色彩感覚も確かでセンスがある人ですね。ここ数年、審査員をやらせてもらっていますが、今年は絶対的なものがなかったというのも事実です。当初は4人全員が票を入れたものの中から大賞を選ぼうということだったのですが、この作品は3票しか入らなかった。そこから浮上してきての大賞受賞でした。

本吉僕は最後まで投票していないのですが、決して評価していないわけではありません。「ヌケがいい絵だな」という印象がありますし、ストイックで緻密な構造は、日本人の心に響くのかなと。これだけシンプルだと、展示の際も目立つでしょうね。

O JUNやはり、今年は全体的におとなしかったのかな。絵のレベルは変わらないのですが、規定のサイズを超えるとか、どう評価していいのか始末に困る作品というのが公募展にはつきものなのですが、今年はなかった。

天明屋去年は、色彩的にも、もっと鮮やかでどぎついものが多かった記憶があります。おとなしさは時代的な傾向なのかもしれませんが、内容のスケール感が小さくなりましたね。その意味では、未来賞の吉野ももさんの作品は、スクウェアの画一的な画面が多い中、あえてシェイプドキャンバスを使って、全体の中で目立ってやろうという狙いが成功し評価につながりました。

本吉吉野さんの作品を最初に見たときに、半立体かなと思ったんです。でも実は平面作品で、暗闇の中心に吸い込まれそうなリアリティがある。舞台セットのようでもありますが、こういう舞台美術的なものもありなんだと。

大島いわばトリックアートですが、ディテイルまで実に正確に作られていますね。色使いも含めて、現代美術の領域で勝負していると思いますよ。

O JUN単純に、僕はこういう丁寧な仕事ができないので、自動的に入れるんです(笑)。こういう風には描けないし、描かないしね。

天明屋未来賞の井上稚菜さんの作品は2点組でした。彼女はもう1作品を出してきてそちらは3点組。珍しいスタイルで、僕を含め小さいながらも審査員の目をひきましたね。

O JUN要するに並べたときに、規定の100号に収まればいいという解釈での出品でしょう。

大島2つの絵のつながりは極めて不明瞭、それが却ってモチーフの謎めいた感じを増幅しています。

大島ご自分の世界観は強烈なものを持っていると思うんです。クレメンテは宗教的なものを背後に持っていましたが、それを彷彿させるような雰囲気もありますよ。

本吉僕も好きな作品ですね。不統一の中に調和がある。僕もクレメンテを思い起こしました。1枚1枚で見ても気持ちのいい絵ですが、2つ並ぶとまた不思議な空間が生まれている。

O JUNセンスの良さは非常に感じますけどね。

大島未来賞の工藤萌子さんも組作品でした。こちらは1枚を背景のように配置し、その前面にもう1枚を吊るして展示するという作品でした。

本吉組み合わせて見せるという考えかたは、グラフィックアート的ですね。

大島ええ。加えてオリジナル性の高さを感じます。バックの背後霊のようなイメージも強いですし、展示の仕方と内容とが一応の成果を収めているという印象です。

O JUN僕の評価は、「こもっているんだけどヌケがいい絵」。配色のセンスがいいんでしょうね。色彩や形を、見る人の腑に落ちるところに押し込まない。これも技術なのかなと思いましたね。

天明屋あと2人の未来賞ですが、どちらも具象描きこみ系です。川田龍さんは、単純なリアリズムではなく、手の部分にわざと筆致を残すなど、画面にいろいろな仕掛けをしている。絵として見せる技術を持っている人だと思います。色は渋目、昭和的な空気も感じさせる画面構成で、逆にそれが全体の中で目立っていました。

O JUN僕は、古沢岩美を思い出しましたよ。

大島全体を通して強烈なインパクトがある作品ですね。加えて、天明屋さんも指摘されていますが、周到な仕掛けを含んでいる。女性の体に青が塗られていて、それが空の色とイメージを結んでいたり、絵の中に絵があるというメタフィジカルな構成にもなっている。

本吉モデルは動きを止めているんだけれど、背景の空が動いているようなイメージを僕は受けます。筆致を残した手の描写などは画面が動いていることの暗示にも感じます。一方の尾崎藍さんの作品は、少しイラスト寄りの作品でしょうか。ユーモラスで、「ポロリ」にやられました(笑)。風船の透明感とか、気持ちがいいんですよね。

O JUN作者は女性ですか。「自画像」なんだ(笑)。

天明屋技術的には真面目な描き込み系の作品なんだけど、ばかばかしさがあって、くすっと笑えちゃう。そういう要素も今の美術には大事な要素の一つだと僕は考えています。色彩感覚もいいし。

O JUN風船に町影を映りこませたりと、尾崎さんの作品にも仕掛けがあって。すっと笑った後に、では絵を読み解いていこうかなと思わせる。その意味では古典的な題材に近いのかな。

本吉僕はイラスト雑誌の編集長なので、イラスト的な作品も選ぼうということで推したのが、専門学校最優秀賞の中村文哉さん。浮遊感があって、バックの中間色とモチーフの原色との対比が気持ちよい作品です。既視感がなくはないのだけど、一個一個の造形もしっかりしている。

大島ええ。ひとつひとつの造形はナイーブなのですが、引いて全体を見ると、実に楽しい感じが伝わってきます。

O JUN本当に見ていて楽しい絵ですよね。技術的なことですが、中村さんだけでなく今回の出品者の中には、ベニヤのパネルにジェッソを塗って直接描いている人が数人いました。多くの人がラワンベニヤを使っているんだけど、ラワンだと時間が経つとジェッソを通り越していろんなものが出てきて、シミや汚れの原因になってしまう。だから直接ベニヤに描くならシナベニヤを使うほうがいいんだと専門学校でも教えたほうがいい。せっかく色のセンスもいいのだから、基本的な技法を教わった上で描かないともったいないかな。

大島最後に高等学校優秀賞ですが、4人の審査員がまっぷたつに割れてしまったので、特別にふたりに賞をあげることになりました。僕は一次選考のファイル審査からかかわっているのですが、去年と比べて高校生のレベルが非常に上がっている。

天明屋個人差はありますが、確かに一定以上の作品を見ると、技術的には高校生と大学生の差がないようにも感じますね。僕が推したのは高等学校最優秀賞の池田碧さん。奇抜なイメージですが、丁寧に描きこんでいて好感が持てます。

本吉池田さんは日本美術に通じる平面的な作品ですが、従来の日本美術の枠にとらわれることなく、楽しげでかつ不気味な要素もある。色彩も豊かで自由な感性を感じさせます。

大島望月咲慧さんの作品では、植物の絡み合わせ方にアールヌーボーの作品群を想起しますが、絵として上手にまとめあげている点に関心しました。池田さん。一見エッシャーのようだけど、実はオリジナル性に富んでいて、構想力も素晴らしい。メッセージ性も高校生らしく気持ちのよい絵です。

O JUN望月さんはグラフィック系の志向があるんですかね。よく見ると、色々な描き方を絵の中に試している。線描きで面を起こしてみたり……。もちろん高校生だから発展途上なんだけど、しっかり目標をもって描いているなと、好感を持ちましたね。このTURNER AWARDは学生であることが応募条件で、年齢制限はないわけです。最近では東京藝大にも50歳を超えた生徒が入ってきているんですが、どこか吹っ切れているからすごい絵を描く。そういう人が応募してくれるともっと面白いと思うんですけどね。

大島以前と比べ少し減ったとはいえ、今年も約750点の応募があったと聞きます。公募展としては多い数字でしょう。近年は、絵画のコンペが減っていますし、この賞の重要度は今後高まっていくと思いますよ。しかも応募が無料で何点でも出品できますから、もっと広く認知させて、O JUNさんがおっしゃるように幅広くいろいろな方に参加していただけるような取り組みをしていきたいですね。